国際連携

NWECグローバルセミナー

実施報告

2019年度 NWECグローバルセミナー ジェンダーとメディア

開催期間:2019年12月6日(金)

開催場所:一般財団法人主婦会館 プラザエフ地下2階 クラルテ


国立女性教育会館では、アメリカから専門家を招聘し「ジェンダーとメディア」というテーマで、NWECグローバルセミナーを次の内容で開催します。

1. 趣旨

2019年度の「NWECグローバルセミナー」は、ジェンダーとメディアをテーマとして取り上げます。メディアは社会に残る性差別や固定概念を許容する規範を変革することもできる反面、既存の差別を強化、温存してしまう場合もあります。たとえば、世界59ヵ国の報道機関における管理職の女性比率は27%にとどまり(Global Report on the Status of Women in the News Media, 2011)、活字媒体やラジオ、テレビでジェンダーに関するニュースは9%にすぎません(Global Media Monitoring Report: Who Makes the News?, 2010)。インターネットへのアクセスのジェンダー格差は世界平均で12%にのぼります(ICT Facts and Figures 2017)。
ソーシャルメディアはジェンダー平等の推進力となる可能性を秘めています。ICTの普及は、女性たちの声を社会に広く発信することを可能にしました。一方、リベンジ・ポルノやサイバー空間での女性に対する暴力や声をあげた女性へのオンライン上でのハラスメント等、新たな課題も発生しています。 本セミナーではメディアが女性のエンパワーメントの推進に果たす役割やメディアにおけるジェンダー 表象について、日米の専門家を招聘し議論をおこないます。

2. 主題

「ジェンダーとメディア」

3. 主催

独立行政法人 国立女性教育会館

4. 後援

文部科学省・アメリカ合衆国大使館

5. 会場

主婦会館プラザエフ地下2階 クラルテ
東京都千代田区六番町15

6. 期日

2019年12月6日(金)13:00~16:30

7. 使用言語

日本語、英語(同時通訳付き)

8. 募集人員

メディア関係者、企業関係者、研究者、男女共同参画の行政担当者、女性関連施設職員、女性団体等のリーダー等 80名程度

9. プログラム

第一部:基調講演 「メディアにおけるインターセクショナリティ(交差性)を問い直す」

マデリン・ディ・ノーノ氏
ジーナ・デイビス メディアにおけるジェンダー研究所代表

【ジーナ・デイビス メディアにおけるジェンダー研究所の概要】
2004年、アカデミー賞®受賞俳優でありアドボケイトであるジーナ・デイビス氏によって設立され、メディア・エンターテインメント業界で初めて、そして唯一、調査研究に基づいて活動する研究機関です。無意識の偏見を取り除き、(業界内での)ジェンダー平等を達成し、固定概念に立ち向かい、11歳以下の子ども向けエンターテインメントやメディアにおいて、インターセクショナル(分野交差的)な女性キャラクターを多く作り出すことを目的として、コンテンツ・クリエイター、企業や視聴者に教育を施し、影響を与える活動をおこなっています。

第二部:パネル・ディスカッション「メディアを通じた女性のエンパワーメント」

マデリン・ディ・ノーノ
根本かおる   国際連合広報センター所長 
青木玲子    国立女性教育会館情報課客員研究員
コーディネーター 田中東子 大妻女子大学文学部コミュニケーション文化学科教授

10.申込方法・申込期限

①申込方法

ア.電子メール
下記の必要事項を入力のうえ、rese2@nwec.jpまでお申し込みください。
(メールのタイトルを「2019年度NWECグローバルセミナー参加希望」としてください。)

イ.ファックスまたはホームページから申込用紙をダウンロードのうえ、
1)お名前・フリガナ、2)郵便番号・住所、3)電話番号、4)ファックス番号、
5) メールアドレス、6) 所属先を記入し、下記までお送りください。

独立行政法人国立女性教育会館研究国際室 グローバルセミナー担当
FAX番号 0493-62-9034

②申込期限 2019年12月2日(月)必着
③決定通知

参加決定次第、メールもしくはファックスにてご連絡いたします。

11.所要経費

参加費 無料

国立女性教育会館は、令和元年12月6日(金)に、「ジェンダーとメディア」をテーマとした2019年度NWECグローバルセミナーを、主婦会館プラザエフ(東京都千代田区)において開催し、内外から約100名の参加者があり、活発な議論が行われました。

第I部基調講演

第I部基調講演

第Ⅰ部基調講演は、ジーナ・デイビスメディアにおけるジェンダー研究所(本部 ロサンゼルス)所長のマデリン・ディ・ノーノ氏による「メディアにおけるインターセクショナリティ(交差性)を問い直す」と題する、詳細な活動報告です。

ジーナ・デイビスメディアにおけるジェンダー研究所は、俳優のジーナ・デイビス氏が2004年に設立したメディア・エンターテインメント業界で唯一、実証的な調査研究に基づいて活動する非営利団体です。

マデリン・ディ・ノーノ氏

基調講演の冒頭では、メディアは私たちの価値観に大きな影響を及ぼしており、例えば、人口の51%を女性が占めるにもかかわらず登場人物の男女比は2:1で、エンターテイメント、メディアで女性の人物が登場する機会が奪われていることを指摘します。1日7時間以上メディアに没頭する子どもたちのメディア消費が心の健康に影響を与え、思春期の鬱が52%増加している現状、そしてメディアで女性が性的対象として描かれることによって少女の摂食障害、自尊心の低下、鬱病につながること等が紹介されました。

こうした現状を改善するためには、スクリーン上での描写を修正することによりプラスの影響をもたらすことができると述べ、登場人物のジェンダー格差、リーダーとしての女性の描き方、人種・障がいの描き方などについて詳しい調査の結果を示します。また興行成績のデータからは、女性が主役を務める映画が高い興行成績を収めており、白人/有色人種がダブル主演を務める家族向け映画の興行成績がもっとも高く、白人が主演を務める映画の平均78億円に対し、ダブル主演映画は平均約254億円であるとの結果から、メディアやエンターテインメント分野にジェンダーと多様性の視点を導入することが現状を打開する道につながると、示唆していきます。そのための具体的な方法は、概要、脚本、配役に具体的な情報を加える、男性の登場人物の名前を女性の名前に置き換える、人種を盛り込む、性的指向を盛り込む、障がいを盛り込む、などです。

女性は主体性を持った人物として描かれているか? 過度な性的対象になっていないか? ユーモアのセンスはあるか?などと問いかけ、多様なバックグランドを持つ作家・監督の採用、公平なマーケティング資源の分配、幅広い層の人々の経験を反映するストーリー、脇役の多様化などの具体的な提言で締めくくりました。

第II部パネルディスカッション

第II部パネルディスカッション

第Ⅱ部のパネルディスカッションは、第Ⅰ部の発表を受けて、「メディアを通じた女性のエンパワーメン」をテーマとした、3つの報告と議論です。

田中東子氏(大妻女子大学文学部コミュニケーション文化学科教授)による「日本のメディアに〈交差性〉はあるのか?」はまず、キーワードとしての交差性の概念の定義からはじまりました。1990年代以降、「ポストフェミニズム」という状況が到来し、第二波フェミニズムの成果を受け止め、その限界を批判する新しい世代の女性たちが「交差」という概念を重視し、フェミニズムの新たな潮流を紡いでいます。第二波フェミニズムの白人中心主義的・中産階級的な様相を批判してきたブラック・フェミニストと有色人種のフェミニストたちは、性差別の問題、レイシズム、経済的格差などへの取り組みを通じ、交差的なアプローチへと至る視点を切り開いたのです。人種や階級、セクシュアリティや年齢、さまざまな障がいなど、多様なアイデンティティとの交錯を通じて権力関係を分析することの重要性を強調する言葉で、キンバー・ウィリアムズ・クレンショーによって導入された、と言います。

田中東子氏

本日の基調講演は、このような「交差性」という概念の下で展開され、実証データとして検証したものです。日本の状況を振り返ると、メディアにおける「ジェンダーと交差性」というテーマへの取り組みは20年以上遅れているとのこと。日本のメディアにはなぜジェンダー視点がないのかについて、田中氏は、①メディア産業での従事者のジェンダー構成の問題、「交差性」以前に「ジェンダー平等」も達成されていないメディア文化にはどのような弊害が生じるのか、②メディア制作者によるコンテンツとそれを受け取る女性たちの間に生じた乖離がSNSを通じて顕在化、③2015~2019年までに自治体や企業の広告での女性の表象について、多くの女性たちから批判の声があがっている、の3点をあげています。

その結果、固定的性別役割分業を強調したり女性の商品化を想起させる広告や、アダルトビデオの手法を盛り込んだ動画やポスターの公開が相次ぎ、次々と炎上しては取り下げられるものの、また新しいものが登場するという事態が繰り返されています。民間企業だけでなく、自治体や大学など公共性の高い組織もこのようなPR動画を制作してしまうという事態に陥っていると指摘します。
これからの新しい方向としては、「#metoo」運動を受けて、「#kutoo」の広がりや職場において女性のみパンプス着用が強制されることに対する抗議行動が始まっており、こうした行動が今後、広範に展開されていくだろうという予測で締めくくられました。

つづいての根本かおる氏(国連広報センター所長)による「国連のコミュニケーションとジェンダー平等」は、国連広報センターの紹介から始まりました。同センターは、ニューヨークの国連本部直属の事務所で、1958年の開設以来、日本と国連の架け橋のような存在だということです。

根本かおる氏

国連では「国連持続可能な開発サミット」(2015年にニューヨークの国連本部で開催)の成果文書として採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の行動計画としてかかげた「持続可能な開発目標(以下、SDGs)」を推進しています。17の目標と169のターゲットからなるSDGsは経済成長、社会的包摂、環境保護からなる3つの側面を統合的に推進することをめざしており、一連の目標を達成するためには、分野横断的課題のひとつであるジェンダー平等の推進は重要な要素であると強調します。

SDGsの採択から4年が経過しましたが、第5目標ジェンダー平等の進捗状況を検証すると、政治分野における女性の参画では一定の進展がみられた反面、女性に対する暴力や、児童婚等の課題が山積しています。社会に根強く残るジェンダーに係る無意識の偏見を取り除くためには、幼少期からの教育が鍵となります。根本さんの報告では、未就学児へのアウトリーチの一環として、子どもたちに人気の高い機関車トーマスに女性のキャラクターを設定して、平易な言葉でSDGsやジェンダー平等を学ぶことができる動画が紹介されました。

最後の報告は、青木玲子氏(国立女性教育会館情報課客員研究員)による「メディアを通じた女たちのエンパワーメント」です。

青木玲子氏

近年、阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」など多くの災害関連の記念館や記念碑、メモリアルホールが建てられています。しかし、語り部プロジェクトや体験コーナーなどに女性たちの記録は、残されているだろうか、と問いを発し、災害後の女性たちの活発な動きを追います。東日本大震災を契機として発足した「フォトボイス・プロジェクト」は、被災した女性たちが、写真と「声(メッセージ)」を通して、地域主体の復興をめざして多様な視点から被災経験を記録・発信する活動をサポートしています。展示会やインターネットなどを通して社会に発信し、写真を持ち寄り、グループで話し合いを重ねるなかで、自分や周りの人の視点、地域社会や社会全体の課題などをより深く理解しようとしているのです。また、被災女性の声をすくい上げるもうひとつの取組みとして、イコールネット仙台が実施した講座「ししゅうで伝える『わたしの物語』-東日本大震災の記憶-」についても紹介されました。

女性の災害記録活動は、災害を経験した女性たちのエンパワーメント支援の意義を持つことから、声をあげにくい人々が地域や社会のさまざまな問題・課題を掘り起こし、共有し、エンパワーメントして解決に向け発信していくことが急務だと提言されています。

持続可能なメディアシステムに向けては、以下の6点を強調して、報告の結論とされました。
1 被災者の体験の重要性 
2 多様な人々への配慮 
3 復興・防災政策に向けてのジェンダー視点の重要性 
4 災害プロセスの顕在化 
5 平時からの男女共同参画の推進が防災・復興の基盤
6 マスメディア、ジェンダー視点を持った活動グループとの連携

「交差性」という新しい概念を、多角的にとらえようとする熱気あふれる議論が展開されたセミナーとなりました。

当日配布資料

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