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コラム

「 海外で活躍する女性から見えてきたもの 」 山田 昌弘

山田 昌弘 中央大学文学部教授

 大学から在外研究の機会をいただき、一年間、香港中文大學ジェンダー研究所で香港社会の家族やジェンダー状況について調査研究を行い、昨年帰国しました。香港に一年滞在している中で、たくさんの働く日本人女性の方と知り合いになりました。

 一昔前(30年くらい前まで)は、香港のみならず多くの国で、海外で働く日本人と言えば、既婚男性、それも、日系企業の駐在員。海外で暮らす女性と言えば、駐妻とよばれる駐在員男性の配偶者と決まっていました。

 しかし、グローバル化、そして、女性の社会進出の波で、海外でさまざまな立場で働く日本人女性が増えてきました。香港も例外ではありません。銀行やメーカー勤務で派遣されてきた駐在員女性、現地の人と結婚した女性、そして、自ら香港にチャンスを求めてきた女性、そして、駐在員の妻の中にも現地企業で働き始めた女性も出てきました。駐在員として派遣された既婚女性が、夫を日本から連れてきたという「逆転駐在員夫」ケースもあります。

 そんな中で彼女たちは、独身、既婚、子育て中にかかわらず、ここでは女性にとって働きやすい環境が整っていると言っています。香港の女性管理職比率は、29.4%(2009年)と欧米並みで、日本(10.6%(2012年))に比べて大幅に高くなっています。女性だからといって差別される経験はないといっています。また、住み込みの外国人ホームヘルパーが安価(月5万円程度)に雇えます。現地で子どもを育てながら共働きしても、母親に家事負担が重くのしかかるということはありません。

 そして、もっとも大な違いは労働慣行だそうです。香港では、ワーク・ライフ・バランスは当然と受け止められています。残業はあまりなく、通常6時、7時には終わります。それは、日系企業に勤める駐在員も同じです。現地採用の人たちがみな6時に帰るのに、日本人管理職だけ残業するのも変です。家庭持ちはゆっくり家族と過ごし、独身者や単身赴任の人は、趣味や食事会などを楽しみます。年に数回、1週間のバカンスで家族旅行など普通の事です。そして、男性も女性も、日本で働いていた時は、こんな生活はできなかったと口を揃えて言います。

 日系企業に勤めていた知り合いの元駐在員女性から、帰国命令が出たけれども、退社して、現地の企業に再就職したとの話を聞きました。日本に戻ったら毎日残業の日々、バカンスもろくに取れない生活には戻れない。結婚して子どもが産まれても、こちらなら、無理なくキャリアを追求できるというのです。同じような話は、香港だけでなく、シンガポールでも何人もの女性から聞かされました。

 日本でも、キャリア女性が、生活を楽しみながら、無理なく働ける環境を早急に整備しないと、グローバル化している現在、語学能力が高く優秀な女性は、海外に取られていってしまうのではないかと懸念しています。

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