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コラム

「 息子介護の見方 — ”男ゆえの困難”を問い直す 」 平山 亮

平山 亮 東京都健康長寿医療センター研究所

 家族を介護する男性は、今やめずらしくない。特に、親を介護する息子の増加は著しい。『国民生活基礎調査』(厚生労働省)によれば、同居の主たる介護者に「息子」が占める割合は、2016年時点で17.3%。「娘」(19.9%)との差は縮まり、「息子の妻」(16.3%)を超えた。
 息子介護が増えるにつれ、介護における「男ゆえの困難」が話題に上るようになった。だが、その陰で「女ゆえの困難」はますます見えにくくなっているのではないか—男性介護の研究を始めて以来、しばしばそう感じている。
 例えば、男性の介護者は孤立しやすいと言われるが、フィールド調査を始めて気づいたのは、介護する男たちは良くも悪くも周りの人から気にかけられている、ということだ。逆に、同じ境遇にあっても、女性の介護者へはそれほど注意が向けられない。女性が介護している風景が、あまりにも「ふつう」になっているからだ。実際、介護を始めてから人との関わりが減りやすいのは、男性よりも女性の方だという米国の研究もある。
 男性介護問題とセットで語られやすい「仕事と介護の両立」に関しても同じだ。ケアを必要とする家族がいながら女性が働きに出れば、「家族がかわいそう」「ちゃんと面倒は看られるの?」という非難の目にさらされやすい。だが、働きながら介護する男性は、同情こそされても非難されることは少ない。特に、フルタイムで働く有配偶男性が親の介護をしていると、「妻に親の介護をさせず、仕事も続けて、何て立派なこと」と周囲の絶賛を浴びている。要介護の親を抱えて働く女性が同じように絶賛されるだろうか、と調査の最中いつも思う。
 もちろん、問題は「女性と男性どちらが大変か」ということではない。「男の人の介護って大変そう」と「男ゆえの困難」を語るとき、そこに「ケア=女性のしごと」という前提が忍び込んではいないか—家族と介護のあり方を変えていくために必要なのは、そういう問い直しだろう。

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